種子の拡散
植物はさまざまな方法で種子の拡散を行っています。
その根本は兄弟同士で一カ所に集中して、
生存競争の結果共倒れになることを防ぐことです。
さて、種子の拡散方法ですが、
たんぽぽの仲間のように綿毛を付けて風に舞う仕組みを持つ物、
あめりかせんだん草やぬすびとはぎのように鉤を付けて動物に付く物、
松やかえでの仲間のように羽を付けて飛ぶ物、
ほうせんかやかたばみのように触ると弾けて種子を飛ばす物、
どんぐりのように動物の食料になることにより、母の木から遠くに運んでもらう物、
ぶどうやりんごのように周りに甘い果肉を付けて種子ごと食べてもらい糞と共に遠い所に運んでもらう物、
すいかやあけびのように果肉の中に種子を散りばめ種子ごと食べてもらうもの、
槇のように甘い花托の先に種子を付けて食べてもらう物
等甘い物質を付ける果物の仲間はすべて種子を運んでもらうための仕組みなのです。
ですから、すいかやぶどうの身になって考えれば、食べる時はせめて種子を野外に飛ばしながら食べてあげるべきなのかもしれません。
このように、種子の拡散の方法は、
私たちの身の周りにある植物でもあげていったらきりが無いほどです。
それだけ種子の拡散は種の保存にとって最重要なことであるわけです。
私たちの身の周りの植物のほとんどが種子を拡散する仕組みを持っています。
持っているから今まで生き延びて来たのです。
そんな観点で植物を見るとまた変わった楽しみ方が出来るはずです。
ここからはおまけを2つ。
1つは、松とどんぐりの仲間についてです。
松は種子に羽を付けて比較的遠くに飛ばします。
そこで芽を出し成長します。
実は松には大きな欠点があります。
松の若木は強い光が当たらないと生きていけません。
ですから背の低い若木の頃に背の高い木が周りにあると生きていけません。
それに対してどんぐりの仲間の若木は弱い光の中でも生きていけます。
ですから若木は大木が茂っている中でも育ちます。
どんぐりの仲間は種子をあまり遠くに飛ばさず親木の近くでも生きていけるのです。
しかし、松の仲間は親の陰でも生きていけないために遠くへ種子を飛ばして、
大きな木の無い所を探していかなければならないのですから大変です。
何代も続く松の原生林が無いのは、このことが原因です。
2つ目は、種子と果肉についてです。
植物が甘い果肉を付けるのは動物に食べてもらって種子を運んでもらうためであることは前にも述べましたが、
胚珠(種子の元)が受精しなければ果肉は成長しません。
例えば、歪なりんごがあったとします。
ほとんどの場合成長不良の部分の種子が受精していません。
機会があったら確認してみてください。
しかし、例外はあるものでバナナは受粉(めしべの先に花粉が付くこと)しただけで
果肉が成長するため種が無くてもふっくらとしたバナナが食べられます。